行徳・南行徳エリア
菓匠 京山
市川市富浜2-5-3
素材を吟味してひとつひとつ丁寧に作り上げる和菓子
「菓匠 京山」は、和菓子作り一筋50年以上という和菓子界の重鎮・佐々木勝さんが手掛ける和菓子店です。
1945年8月に4人兄弟の末っ子として、樺太で生まれた佐々木さん。家は網元を生業としていましたが、ご自身は船酔いするので漁師はダメだと思ったそうです。元々、手先が器用であったことから15歳のときに和菓子の道に進むことを決意。一番初めに修業を積んだのが、北海道小樽市にある「高山菓子舗」。佐々木さんが師匠と仰ぐのは、ここのご主人で和菓子界の名人と言われた高山良介氏です。
その後、東京都世田谷区にある「たちばな」を経て、政財界、花柳界からひいきにされている高級和菓子店・赤坂「塩野」に入社。そして、20代にして同店」の職長にまで上り詰めた。その後、神奈川県横浜市の「新月」、千葉県市川市の「松月堂」の工場長を歴任し、1976年、市川市行徳に「菓匠京山」を、1992年に2号店である妙典店をオープンしました。
その間、1997年の明治神宮例祭における和菓子の奉献式で、「煉切の儀」を披露。これは、全国の菓子業者からなる“明治神宮菓道敬神会”が、毎年、明治天皇の誕生日である例祭に菓子を奉納する催しのこと。「煉切の儀」は明治神宮菓道敬神会の中から選ばれた和菓子職人が、明治神宮の本殿前で和菓子(煉切)を作り、それを神職が神前に供える儀式。
和菓子界で佐々木さんのことを知らない人はいないでしょう。
店内にある和菓子の品揃えはとても充実しています。既に銘菓はいくつもあるのですが、研鑽を重ね今もなお新作が登場します。“五感の芸術”と言われる和菓子ですが、その中でも佐々木さんの作る煉切は、色合い・形状ともに美しく、まさに、芸術品そのもの。季節を愛でながらいただくと、上品な味わいに幸せを感じることができます。
素材はすべて徹底的に吟味し厳選。小豆には兵庫県春日町の限定生産品「丹波大納言小豆(しょうず)」を使っているのだとか。さらに砂糖は、氷砂糖、鬼ざら、ざらめ、和三盆など、作るお菓子によって使い分けているそうです。
佐々木さんとお話をして感じたのは、物腰がやわらかく、穏やかでとても温かみのあるお人柄であること。威圧的な雰囲気はまったくありませんでした。卓越した技術があり賞をいくつも受賞しながら驕り高ぶることなく、今でも毎日、和菓子作りに情熱を傾け励むそういう方だからこそ、全国から佐々木さんの元に修業に来る人が後を絶たないのでしょう。これまで佐々木さんが育てたお弟子さんは50人を超えるというので驚きます。
- 入口にはショーケースがあり、お薦めの季節商品が分かる。
- 入口周辺。
- 店内には喫茶スペースがあり、その場でお茶や甘味も味わえる。
- 和菓子が並ぶショーケース。
- 季節の煉切を作る佐々木勝氏。
- 動きがあまりにも早いので、一旦、手を止めていただき撮影。
- あっという間に季節の煉切が出来上がっていく。
- 真夏の太陽に向かって咲き誇る色鮮やかな「ひまわり」が、見事に表現されている。上生菓子1個370円。
- 店内には佐々木氏が受賞した賞状などが並ぶ。千葉県技能大会で県知事賞、日本食生活文化財団食生活文化賞で銀賞を受賞。平成17年には千葉県卓越技能「千葉県の名工」に選ばれる。現在、東京製菓学校、日本菓子専門学校で講師を務めるほか、千葉県菓子高等職業訓練校では校長を務めている。
- 店の奥には、季節の上生菓子の一部が見本としてショーケースに収められている。
- 「丹波大納言小豆」を使用。
- ショーケースには、夏らしい「水まんじゅう」1個210円などが並ぶ。小豆と求肥と栗を小さな舟に詰めた新作の「笹舟」は1個220円。
- 銘菓「大名ふくさ」、「梅ごころ」、「桃」など1個240円。
- 「缶入り水ようかん」は1個270円、6個入り1800円~。
- いろいろな種類の落雁も販売。
- 通常の3分の1程度の大きさに仕上げた佐々木氏のオリジナル煉切、6個の詰め合わせ。右上から下へ「撫子」、「向日葵」、「金魚鉢」、左上から下へ「蛍」、「百合」、「鉄仙(クレマチスの一種)」。季節の花が見事に表現されている。
- 店内でお茶や和菓子をいただくこともできる。
- 季節の上生菓子「朝顔」(1個370円)と冷茶(200円)。
銘菓はどれを選んでもお持たせに喜ばれる
佐々木さんが手掛ける銘菓には、“市川”という場所や歴史・食材にちなんだものがたくさんあります。
下総行徳銘菓「鴨場の月」は、皇太子様、雅子様のご成婚を記念して、下総行徳の誇を知ってほしいという思いから作ったそうです。お二人が何度か立ち寄られた行徳の宮内庁新浜鴨場から、月に向かって飛び立つ鴨の群れをイメージした銘菓。黄金色に薄く焼いたカステラを二つ折りにして半月に見立て、その中につぶ餡と求肥が包まれています。
代表銘菓「武蔵鐔(むさしつば)」は、宮本武蔵の意を表した和菓子。武蔵が陸奥へ旅する途中で過ごした場所は現在の行徳周辺、荒天が続いた際は、行徳の徳願寺に食を求めたそうで、武蔵と行徳は多少なりとも縁のある土地だったことが書物に記されているのだとか。そのことから、最中皮には、刀の鍔がイメージされているそうです。この銘菓は、「第26回全国菓子大博覧会・広島」で、「橘花榮光章」を受賞しています。
「塩どらやき」の商品化の由来は、子どもたちにかつて塩田で栄えた歴史を伝えようと行徳では「行徳塩まつり」をはじめとした様々な催し物が開催されているそうです。この催しに佐々木さんも何か協力できないかと試行錯誤した末、考案したのがあんこに通常の2倍も塩を入れて作ったのが、この和菓子だったそうです。
「市川いちかわ 薔薇ブッセ」(200円)は、市川市の花“薔薇”をテーマとした洋風和菓子。カステラ風の生地に、クリームチーズ、薔薇ジャムをサンドした、甘過ぎない大人のスイーツです。
- 「鴨場の月」1個270円。
- 代表銘菓「武蔵鐔」。手作り最中で、餡は、丹波大納言粒餡、刻み栗入り栗餡、丹波白小豆こし餡の3種類がある。
- お店の外壁には“鴨場の月”の文字が。。。
- 「常夜灯」1本1230円~。
- 「塩どらやき」1個220円。「不老長寿」1本155円。
- 餡と皮が別仕立てで、手詰めでいただく「薔薇もなか」(6個入り1250円)。
- 例年、7月中旬以降に店頭に並ぶ、市川の名産・梨を使った商品「市川梨のしずく」。
- お土産に購入した「武蔵鐔」の丹波大納言粒餡。手作り最中なので、好きなだけ餡が詰めるのが嬉しい! 餡は風味を損なわないよう缶詰めに、皮も仕上がりと同時にパッキングされているのでサクサクで美味しい。「いつでも出来たてを味わってほしい」という佐々木さんの思いが伝わってきます。
【DATA】
菓匠 京山
- 住所:市川市富浜2-5-3
- 電話番号:047-359-8888 FAX:047-359-8893
- 時間:9:30~19:00
- 駐車場:1台
- ※定休日/火曜日
- ※料金はすべて税込み価格