八幡・菅野エリア
CAFÉ 螢明舎(けいめいしゃ) 本八幡
市川市八幡2-4-9 かんていビル 2F
今では希少な“フレンチスタイル”のカフェ
雨の日に偶然見つけたカフェ。大通りに面しているのですが、ビルの2階にあるので看板を見逃すと素通りしてしまいそう。この日も、急ぎ足で歩いていたら通り過ぎてしまったかもしれない……“螢明舎”という文字に惹かれ、階段を上り店内へ。
私が最初に訪れたのは土曜日の15時頃。店内は半分ぐらい埋まっていましたが、その後、続々とお客さんが来て、すぐに満席に。リザーブのプレートが置かれた席もあったので、常連さんが多いのでしょう。
二度目に来店した時は午前中でしたが、店内は昼間でも薄暗く夕刻になるとランプが灯り、とても居心地のよい明るさで、いつ来ても落ち着ける雰囲気です。
店内を見回すと、アンティークな調度品に、これまたアンティークなオルゴールや扇風機などがディスプレイされています。まるで、ずっと昔からそこが定位置であるかのようにしっくりと収まっていましたす。
1982年創業の『CAFÉ 螢明舎』では、フレンチスタイルのコーヒーをいただくことができるとのこと……この“フレンチスタイル”とはいかなるものなのでしょうか。
コーヒー独特の色、芳香、風味を作り出す、コーヒーの味の8割方を決めるとされる最も重要な工程が、生豆を火力によって煎じる焙煎です。美味しいコーヒーを作るには、目的にあった焙煎を行うことが重要で、焙煎のセンサーは“手のひら”なのだそうです。
CAFÉ 螢明舎では、厳選された生豆を苦味とコクの豊かなフレンチローストに仕上げ、更に約2年間前後熟成させたエイジング・ビーンズを使用しています。当然、熟成期間というのは、豆の種類やその年のでき具合によって異なるので、その豆の最高のタイミングを見極めるには、熟練の目利きでなければできません。
その豆をネルのハンドドリップで丁寧に抽出。このネル(布)を使って抽出する方法を考えたのが、16世紀頃のフランス人で、これが“フレンチスタイル”の語源なのだそうです(CAFÉ 螢明舎のホームページより)。
そのコーヒーを、銅製のイブリック(加熱専用鍋)で温め、磁器のデミタスサイズのコーヒーカップでサーブ。
そして、フランスのインテリアを配したオリジナルの空間で提供するのが、30年以上続く『CAFÉ 螢明舎』なのです。
オーナーは下田莊一郎さん。
1970年代に、フレンチスタイルのコーヒーを提供していたお店のひとつが、「レジュ・グルニエ」というお店で、下田さんは、そこのコーヒーが好きで学生時代よく通っていたそうです。そして、カフェ経営を思いたったとき、フレンチスタイルのコーヒーを提供するお店にすることを決め、「レジュ・グルニエ」で修業を重ねたのだとか。
近年、コーヒーを提供するお店は都内を中心に増えており、さまざまなスタイルのお店が出店していますが、このスタイルはとても手間がかかるため、今では提供するお店はとても少ないのだそうです。
こだわりのコーヒーとケーキとのマリアージュも楽しめる
下田さん曰く「CAFÉ 螢明舎ではブレンドが生命」とのこと。ブレンドは2種類。ロア・ブレンドは、ソフトタイプ。ケア・ブレンドはストロングタイプで、どちらも濃度は同じですが、豆の種類と焙煎度合が異なるそうです。
コーヒーの味はとても格別なもので、これまで飲んでいたコーヒーとはまったく異なるものでした。
偶然に見つけたお店だったので、これほどまでにこだわりのあるお店だということを知ったのは、コーヒーを飲んだ後でした。しかも、これほど手間をかけていながら、どちらも550円という価格に驚きます。
ここで提供されるパン以外の料理やお菓子は、すべて手作りです。コーヒーに合う、コーヒーに負けない味に仕上げるには手作りで作るしかなかったのだと下田さん。今尚、下田氏が研鑽を重ねるカフェだからこそ、足繁く通う常連客が多いのでしょう。
写真家として有名な故・星野道夫氏は千葉県市川市生まれ。アラスカを撮り続けフェアバンクスに家を持った星野氏が日本に一時帰国するときによく訪れたのがここ螢明舎だったのだとか。星野氏の特等席はカウンターだったそうです。
ここだけ時間の流れが止まっているかのように思える『CAFÉ 螢明舎』。文庫本片手に、また立ち寄りたいお店です。
【DATA】
CAFÉ 螢明舎(けいめいしゃ) 本八幡
- 住所:市川市八幡2-4-9 かんていビル 2F
- 電話番号:047-336-3545
- 時間:10:00頃~23:00頃
- 駐車場:なし
- 休日:無休
- ホームページ:http://cafe-keimeisha.jp